薬剤師で3児の母、あやかです。
大人たちがみんなマスクをつけていると、「赤ちゃんにもマスクをつけなきゃ…」となんとなく焦りますが、赤ちゃんにマスクをつけさせるのはかなり難しいのが現実ですよね。
でも病気は予防したいし、もうどうしたらいいのか…
でも、病気の予防を考えると不安になるのもよく分かるよ
なんとなく、世の中の風潮は「マスクをしていないなんて非常識」のようになってしまっているので、マスクをしていない赤ちゃんや小さな子供をつれていると肩身が狭いのも事実です。
でもそのマスク、病気を予防する効果がどれくらいあるか知っていてつけていますか?
マスクをつけられなかったとして、予防する方法は他にはありませんか?
今回は、赤ちゃんのマスク着用についての嘘&ホントから、マスクをつけてくれない場合の代用品、小さな子供でもつけられるマスクの選び方、手作りマスクの方法までまとめてあります。
「赤ちゃんにマスクをつけて大丈夫なの?」
「いつからマスクをつけられるの?」
「病気を予防したいのにマスクをつけてくれなくて、どうしたらいいの?」
「どんなマスクなら、小さい子でもok?」
「せっかくだからうちの子用のマスクを作ってみたい!」
などなど……。
様々なママ&パパの疑問に、薬剤師ママが医学的エビデンスをもとに「いや、そんなこと言われても赤ちゃんには無理やん」も交えてお答えしますので、ぜひ参考にして赤ちゃんを感染症から守ってあげてくださいね。
赤ちゃんにマスクは必要なの?
一般的にマスクをつけるには、2つの目的があります。
- 感染症から自分の身を守る
- 自分がもっている感染症を人に広げない
赤ちゃんにマスクをつけるということは、1「赤ちゃんの身を守る」を目的にしている場合がほとんどだと思います。
結論からいうと、一般的なマスクに1の効果はありません。
インフルエンザ診断テスト陽性となり、48時間症状が続いている患者のいる家族を対象として、マスク着用群とコントロール群に分け、マスク着用群では発症者が他の家族と同じ部屋や限られた空間(車の中など)にいる場合にマスクを着用することを5日間実施しました。その結果、調査期間中に家族がインフルエンザ様症状を示した割合は、マスク着用群は16.2%、コントロール群は15.8%で有意差はなく、マスク着用による感染予防効果は認められませんでした。
一般的なマスクは、鼻やあごの部分にどうしても隙間ができてしまう上、フィルターもそれほど目が細かくないので、とても小さなサイズのウイルスは通過してしまいます。
マスクの「赤ちゃんを守る」という意味での効果としては、ウイルスが手についてしまった場合に、指をしゃぶったり顔を触ったりするリスクが減る……ということはあると思いますが、冷静に「マスクをしている赤ちゃん」と「マスクをしていない赤ちゃん」でどちらが顔を触る回数が増えるかと考えると、どうでしょう?
「マスクがあればうちの子は顔を触りません!」という赤ちゃんって、ほぼいないのではないでしょうか。
普通は、マスクが気になって顔を触る回数は増えますよね。まさに逆効果。
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WHOとCDCの新指針について
これまでマスクはいらん!と言っていたWHOやCDCが、マスクの着用を推奨するようになったというニュースを見て「今はマスクの効果があるって認められたんだ」という反論が聞こえてきそうです。
参考Q&A on COVID-19 and masks(WHO)
WHOのQ&Aをざっくりまとめると「感染している患者が、周りの人にうつさない効果はある」「適切に扱わないと意味がない」「医療用のマスクは医療関係者に使わせて」という内容です。
新型コロナウイルスでマスクが推奨されはじめたのは、無症状で本人にまったく自覚がなくても、実は感染していて、ウイルスを撒き散らしている可能性があるので、「自分が感染者だから他の人にうつさないためにマスクをしてね」という意図です。
この意味での予防効果はそれなりにあると、私も考えています。
また、医療用でないマスクには効果がない可能性が高いという内容も記載されています。
※だからといって、素人がN95マスクを入手したとしても、適切な使い方は訓練を受けていないと難しいので、ほぼ意味がありません。
CDCも同様の見解で、「バンダナでもいいから口を覆って」という要請は、「自分が感染を広めないために」です。
一方、自分が感染しないためにマスクを…という指針、それに関するエビデンスはどこにもありません。
「WHOでもマスクの効果はいまいち研究結果が少なくてよくわからん。
これまでは、マスクに意味はないっていう研究結果ばっかりだったし。
……でも、新型コロナは無症状感染者が多いから、人にうつさない意味ではもしかしたら効果があるかもしれない……」
みたいな感じです。
マスクをするメリット・デメリットは?
じゃあ、マスクをする意味はまったくないのか?というと、実はそうでもありません。
- マスクをすることで、直接浴びる飛沫(飛んできたツバがそのまま口に入るような…)は多少防げます。
- 上でも述べたように、マスクがあることで無意識に鼻や口を触るリスクが減ります。
- さらに、のどや鼻が乾燥しにくくなるので、多少はウイルスに強くなるかもしれません。
- WHOやCDCの言うように、万が一赤ちゃんが感染していた場合、他の人に移すリスクは減ります。
マスクを正しく使っていれば、これらのメリットがあります。
……でも、これって嫌がる赤ちゃんに無理やりマスクをさせるほどのメリットでしょうか?
嫌がって泣き叫んだり、マスクを取ってしまったりを繰り返しているうちに、これらのメリットはなくなってしまいますよね。
一方、小さな赤ちゃんへのマスク強制はリスクも高くなります。
- マスクがずれて鼻や口を塞いでしまったり、ヒモが絡まって窒息したりする。
- マスクを嫌がって外す→つけ直す→外すのループで、余計に顔を触る回数が増える。
- ママが赤ちゃんの顔を触る回数が増える。
実際のところ、赤ちゃんの顔にウイルスが付着するよりも、外出時はママの手にウイルスが付着するリスクのほうがはるかに高いので、ママが赤ちゃんの顔に触るたびにリスクは大きくなっていきます。
たとえば…
赤ちゃんを抱っこひもで抱っこしながらお出かけ。
↓
自宅マンションのエレベーターのボタンを押す。
↓
ボタンについていたウイルスがママの手に付着。
↓
つけていたマスクを、赤ちゃんが嫌がってずらす
↓
マスクを直すために、ウイルスのついた手でママが赤ちゃんの顔に触れる。
……リスク、高くなっていますよね。
結論としては、小さな赤ちゃんにはマスクは不要です。
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赤ちゃんのマスクはいつから?
市販されているマスクは、基本的には一歳半からというものが多くなっています。
一歳半になれば、窒息のリスクはかなり減りますし、お気に入りのマスクなら嫌がらずにつけてくれることもありますよね。
ママがマスクをしていれば、「おそろい」ということで、むしろマスクをつけたがる子も出てきます。
一歳半以降なら、本人が嫌がらないのであれば、マスクをつけてあげるのも良いかと思います。
気に入ってつけていれば、ずらして口や鼻を触ってしまう回数も減りますので、一定の予防効果も期待できます。
そこから手洗いなどの感染予防への意識を身につけるきっかけにもなりますね。
正しく扱ったマスクと手洗い(手指消毒)を組み合わせて徹底することで、感染のリスクを減らすことができるという研究結果もあります。
マスクを付ける前と、帰宅してマスクを外したあとは、必ずきちんと手洗いをしておきましょう。
また、一歳半以降でも、眠るときは窒息のリスクが高いので、かならず外してください。
一歳半からのマスクの選び方
小さなお子さんのマスクを選ぶときには、以下のポイントに気をつけておくと失敗が少なくなります。
- 呼吸が苦しくならないもの(ハンドメイドのマスクには要注意)。
- 子供が好きなキャラクターがついているもの(嫌がらずにつけてくれる確率up)
- できれば2,3種類準備しておいて選べるように(いやいや期でも「どっちがいい?」と選ばせるとつけてくれることも)
- 手に入れば使い捨てのもの
本当に良いと思えないものはご紹介したくないので、もしどうしても必要な場合は以下のリンクから探してみてください。
マスクを嫌がって泣く、すぐ外してしまうときはどうすればいい?
マスクがなくても、感染を予防する方法はあるから大丈夫。
一歳半をすぎていたとしても、嫌がるのであれば無理やりマスクを付ける必要はありません。
これまで並べてきたように、マスクをしたからと言ってお子さんの感染リスクは減りません。
正義感に駆られた人が「マスクをさせないなんて非常識!」と言ってきたら「ムリヤリさせようとすると、泣き叫んで余計に飛沫を飛ばしますが?」「むしろお前に飛ばしてやろうか?(心の声)」とスルーしていればokです。
ほとんどの人は、小さな子にマスクをつけさせるなんて無理難題だということはわかっています。
子供にマスクを強制する前に、大人ができることはもっとたくさんあるはず。
ママがマスクをしている姿を見せて、興味を持ったら「病気から守ってくれるんだよ」と説明して、マスクの意味を理解できるようになれば、いつかはマスクをしてくれるようになるかもしれません。
本人が納得してから、マスクをつけてあげてください。
赤ちゃんのマスクの代用品は?
赤ちゃんがマスクをつけてくれない時に、ネットのみなさんが「使ってる!」という代用品。
本当に効果があるのか?を調べてみました。
✗:買わないで。使わないで。
△:多少は効果があるかも。リスクも有る。
○:多少は効果があるかも。リスクは低め。
✗空間除菌
首にぶら下げたり、家においておいたりするタイプがありますが、消費者庁から怒られているくらい、エビデンス皆無。
お守りとしても、赤ちゃんがなめたりすると逆に危険。
使うのはやめましょう。
参考新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品の表示に関する改善要請等及び一般消費者への注意喚起について[消費者庁]
✗顔にかけるスプレー、塗るマスク
マスクの代わりに顔にシュっとするだけで、花粉やウイルスを吸着して鼻や口に入るのを予防するというもの。
ちょっと前に、花粉症向けに流行ったものですが、赤ちゃんの場合はなめてしまったり吸い込んでしまったりとリスクも高いので、ナシです。
効果も微妙な感じ。
△バギーマスク
ベビーカーをすっぽりと覆うタイプのカバー。
レインカバーよりは通気性が多少良いかも?
完全にはウイルスの侵入を防げませんが、赤ちゃんが口にマスクをするよりはずっと安全です。
ただし、夏場はかなりムレて熱くなるので、熱中症のリスクを考えてこまめに赤ちゃんの様子を確認してください。
△ベビーカーのレインカバー
ベビーカーを持っているなら、一つは持っていて損はないアイテム。
バギーマスクまでいかなくても、レインカバーでも同じ程度の効果は期待できます。
ただ、ビニールハウス状態になるので、こちらも熱中症には要注意。
△レインコート
これも夏場は暑いですが、レインコートのフードで赤ちゃんの顔周りをガードしてあげることも可能。
透明なつば付きのレインコートなら、ちょっとしたフェイスガードのようにも使えます。
帰宅後はアルコール消毒してもよし、そのまま水洗いしてもよしで管理も楽チン。
レインカバーもレインコートも、バギーマスクも、カバー外したあと、手は必ず手洗い・アルコール消毒してから赤ちゃんに触れるようにしてください。カバーの外側を触った手でそのまま赤ちゃんを触ったら、意味がありません。
○カバー付き帽子
青森県鯵ケ沢町で「カバー付き帽子」を赤ちゃんに配布するというニュースで話題になりました。
抱っこでもベビーカーでも、あんよでも使用可能。
マスクの代用として小さな赤ちゃんにつかうには、確かにこれしかないかな……という感じ。
色々見た感じ、↑こちらのパケットハット(楽天市場)が、透明部分がしっかりしていて一番窒息のリスクが低そうでした。
ただ、この透明部分を赤ちゃんが絶対になめないか…と考えると、効果は限定的かなぁという気もします。
レインカバーよりはましですが、顔周りの空気は暑くなりそうなので、やはり熱中症には注意。
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赤ちゃんをウイルスから守るためのポイント
マスクをしてくれない!
マスクをしたとしても、感染予防効果はあまりない!
「だったらどうすればいいのよ!」というわけで、赤ちゃんを感染症から守るために心がけたいポイントをまとめておきます。
この5つのポイントに気をつけるだけで、嫌がる赤ちゃんに無理やりマスクをするよりも何倍も感染を予防する効果があります。
- 外出を短く、帰宅したらすぐにシャワーへ(赤ちゃんは手洗いができないので、全身を洗ってしまおう)。
- 多くの人が利用する場所では、ベビーカーや抱っこひもに入れて、周りを触らないように(手すり、ボタンなどが危険)。
- パパ・ママも赤ちゃんも、帰宅したあとは上着を部屋に持ち込まない(花粉もウイルスも玄関でシャットアウト)。
- 大抵の場合、赤ちゃんよりもママ&パパが感染して家の中へ持ち込むので、まずは家族が感染しないようにする。
- 帰宅後のママ&パパの手は30秒以上かけてしっかり石けんで洗う(ウイルスはママ&パパの手から赤ちゃんにうつる)。
赤ちゃんを守ることに気を取られて、つい自分のことがおろそかになりがちですが、感染症に関してはまずは大人が家に持ち込まないことが一番重要です。
外出時も、赤ちゃんに飛んでくるウイルスよりも、大人が手すりやドアノブ、エレベーターのボタンなどに触って手につくほうがずっと多いのです。
とにかくママ&パパが外出時もこまめに手洗い、アルコール除菌をすること。
案外盲点なのが、赤ちゃんが大好きなママ&パパのスマホ。
スマホにもウイルスが大量に付着していたという研究もありますので、基本的に外出時にママ&パパが使っているスマホは触らせないようにしてください。
赤ちゃん用マスクの作り方
感染症予防の観点からは、手作り布マスクはあまりおすすめしませんが、子どもがつけたがってる!とか、幼稚園&保育園でつけてきてといわれてしまった!という場合には、手作りマスクもアリです。
保育園や幼稚園で行われる食育のイベントなどで必要なときには、手作りマスクは大活躍してくれますね。
まとめ:赤ちゃんには無理にマスクはつけなくてok
マスクをつけたからといって、赤ちゃんを感染症から完全に守ることはできません。
嫌がる赤ちゃんに無理やりつけるのはやめましょう。
空間除菌やマイナスイオン発生器などの「コロナウイルスに効く!」という怪しい商品には注意。
布製のマスクは、逆に感染リスクを上げるという研究結果もあるので、できるだけ避けましょう。
世の中が不安になっているときは、妙な商品や詐欺師が出てくるので、くれぐれも気をつけてください。
「赤ちゃんを守る」という意味での感染予防には、マスクよりもママやパパの手洗いのほうがずっと大事。
赤ちゃんとお出かけしたあとは、そのまま一緒にシャワーを浴びてしまうのもおすすめですよ。
赤ちゃんが一歳半を過ぎて、マスクを嫌がらなくなったら、好きなキャラクターのものや、ママとおそろいにしてみるなど楽しんでつけてみてくださいね。
ママもパパも赤ちゃんも、「こうしなきゃ」とストレスを貯めすぎず、不安を煽る人にのせられないように、しっかり情報を吟味してくださいね。